「古い角質」の誤解-肌トラブルの解決に関する思考法
気がつけば年明け最初の投稿です・・・。忙しさにかまけて更新が滞ってしまいお恥ずかしい限りです。
さて、昨年末から今年にかけてご来店されるお客様に医療関係者の方も比率多くおいでになりました。
よく「医者なんかダメだ。」という美容業者もいらっしゃいますが、始めにお話しすると、これは「病院よりウチのほうが」という自慢をしたいのではありません。
ニキビをはじめとする肌トラブルを解消する場合では、「問題と解決法のマッチング」ということが重要になるのです。
つまり「優・劣」についてではなく、「適・不適」について思考していきましょう、ということです。
ニキビはもちろん、乾燥肌や肌荒れ、赤ら顔などの敏感肌症状にお悩みの方でも、「古い角質層が原因」という話を見聞きすることが多くあると思います。
私も仕事上、そのような製品やサービスを提供する業者さんから、(場合によっては消費者よりも多く)勧誘を受けることがありますが、まずこの「古い」というワードが恣意的てあり、事実に対して誤認であるということを知っておいて欲しいと思います。
まず、ヒフの役割とその構造について(角質層の形成、役割に関してはこちら)、基本的でいいので理解しておきましょう。
ヒフがなぜあるのか?と考えれば、それは「体を守る」ための器官です。
この役割の為に、ヒフは表面に「角質層」を作ります。これが普段私たちが目にする「肌」です。
この肌はわずか0.02mmの極めて薄いバリアです。
この薄いバリアに、
- 死んだ表皮細胞とその「スキ間を埋める細胞間脂質」
- しなやかさと強度を維持する水分と、それを抱える「NMFというアミノ酸」
- 皮膚表面を弱酸性に保ち真菌や通過菌から身体を守る「皮脂膜」
これらが存在すること(そしてその状態を維持すること)で「体を守るバリア」として機能します。そしてこれが「きれいな肌」です。
この角質層が「古い」というのが、ここ数年の(美容系の皮膚科も含めた)美容業界の定義づけですが、角質層の「新しい・古い」という考え方は、お肌の問題解決には無意味なことだとご理解ください。
重要なポイントは、上記のように「正常に機能しているかどうか?」で、「新しいか古いか?」ではありません。
また、軽度、重度にかかわらず肌トラブルが「続く」ような肌では、正常な角質層を作るための「時間」が圧倒的に不足しています。
本来であれば数週間かけて作られる角質層が、早い場合では数時間で作られ続けています。急いで体を守る必要があるからです。
そして、このように短期間で作られた角質層を「古い」とし、それが問題である、と定義づけすれば、「古いものをとる」となります。
角質層を除去すれば、身体としてはバリアが非正常となりますから、さらに角質層を「急いで」作ります。
そして急いで作られた角質層は、やはり正常に作るための時間が不足していますから、再びトラブル状態となります。
「手触り」はつるっとして、「実感」はあると思いますが・・・。
ですから「症状を治す」という目的で「症状の治療」を行うことでは「正常な肌」が作られるわけではありません(「新しい」かもしれませんが)。
もしあなた自身が「今あるトラブル」にお悩みで、「今、つるっとしたらそれでいい」というようにお考えなら、その方法は「マッチしている」かもしれません。
しかし、もし「トラブルが続くこと」や「複数のトラブル」にお悩みの場合では、それらを「治す」で「問題解決なのか?」ということをよく吟味してください。
私は真の問題解決は「正常な肌を形成・維持すること」と考えています。